研究活動
<微生物収集とと微生物リソースを活用した研究>
発酵醸造において中心的な役割を果たす微生物は、麹菌、酵母、乳酸菌です。本センターでは、これらの3つの発酵微生物研究を基軸として発酵産業振興への貢献を目指します。
2021年度から2023年度までの3年間にわたり、主に滋賀県の食品や自然環境から、麹菌、酵母、乳酸菌を網羅的に探索・収集してきました。その活動において、代表的な発酵微生物である酵母や乳酸菌を中心として、膨大な数の微生物を収集。2024年度以降の学際的研究の科学的基盤を培うとともに、研究推進に必要な微生物材料を取得できたと考えています。
また、2023年度までの研究活動においては、収集した微生物を用いたパンやクラフトビールの開発、取得した知見を活用した簡易フナズシ作製キットの実用新案登録および事業化にも取り組みました。
<発酵微生物を用いた発酵醸造プロセスに関する知見の蓄積>
発酵醸造産業は、日本の食文化を支える基幹食料産業のひとつです。発酵醸造に関する精密な製造技術は、長年の試行錯誤の末に確立されたものであり、「職人技」と呼ばれることもあります。その発酵技術の伝承により、発酵醸造技術は極めて高度化され、日本は「発酵大国」と称されるに至った一方で、発酵醸造産業には高い技術が必要とされることから、発酵醸造に興味を有する若年層は多いものの、新規参入のハードルは高いのが現状です。
このような背景から、発酵微生物の発酵特性や増殖をデジタル情報として収集することが有効です。
発酵醸造プロセスは、長い伝統に基づき経験的に構築されてきましたが、それらのプロセス管理をデジタル情報化することで、一般化されたプロセス原理を見出すことが可能ではないかと考えています。
<方向性を明確化した発酵醸造食品による地域貢献>
具体的な目標として、嗜好性に優れ地域特産物として価値が高い発酵醸造食品および健康機能性を有する発酵醸造食品による地域貢献を掲げます。また、生きた微生物を含み機能性を有する発酵醸造食品の研究・開発においてターゲットを具体化するため、発酵醸造食品をアスリート向け食品として位置付け、その有効性を評価します。
さらに、高付加価値化した発酵醸造健康食品の開発にとどまらず、広く滋賀県域に健康食品およびアスリート補食品として普及させることも視野に入れて、「発酵醸造学×スポーツ栄養学×スポーツマネジメント」による産官学連携研究として取り組んでいく予定です。
<研究者育成と社会への貢献>
本研究プロジェクトでは定期的に研究発表会を実施し、学部生・大学院生の相互交流と研究意欲向上に貢献します。また、微生物リソースの提供や新たな共同研究を通じて共同研究の展開と発酵醸造産業への成果の還元を目指します。