台湾国立曁南国際大学との研究交流会を実施【発酵醸造食品機能性研究センター】
2024.11.07
2024年10月31日、国立曁南国際大学の鄭 健雄 教授、祭 宗伯 副教授をお招きし、深草キャンパス和顔館にて研究交流会が開かれました。本学からは、発酵醸造食品機能性研究センターの島 純 教授(農学部生命科学科・同センター長)と田邊 公一 教授(農学部食品栄養学科・同センター兼任研究員)、柿崎 博美(同センター博士研究員)が参加しました。また、会の冒頭では、本学政策学部の金 紅実 教授が、中盤からは祭 宗伯 副教授が通訳を務めました。
【国立曁南国際大学について】
国立曁南国際大学(創設1906年)は、台湾中部の南投にある国立の総合大学で、人文科学、経営学、理工学、教育学、看護健康福祉学を学ぶことができ、水沙蓮大学という人材育成に特化した特色ある施設も併設されており、鄭 教授はこちらの学院長も兼任されております。
【鄭 教授の研究分野と活動】
鄭 教授の主な研究分野は、農業と農村観光や観光産業分析、マーケティング調査、経営で、宿泊施設のビジネスモデルや飲食業界におけるサービスイノベーション、農村観光開発なども研究されています。また、鄭 教授はコーヒーが好きで、その情熱はコーヒーを淹れて飲むだけにとどまらず、自身の農場でコーヒー豆を生産し、焙煎、抽出、提供、さらには普及にまで関わるほど幅広く活動されています。今回の交流会では、鄭 教授が情熱を注いでいる「コーヒー」について発表しました。
【台湾産コーヒー】
台湾といえば烏龍茶などのお茶が有名ですが、実は質の高いコーヒー豆の隠れた産地でもあります。諸説ありますが、今から200年程前にコーヒーの苗木が持ち込まれたといわれており、かつては台湾産コーヒーの起源を探る研究も行われていました。
台湾のコーヒー豆は、他の国と比較すると栽培面積が小さく、重機が入ることができないような傾斜地で栽培されています。そのため、栽培から収穫までの手間のかかる作業を生産者達の手で行なわなければなりません。しかし、これこそが台湾産コーヒーを高品質なものにする要因のひとつです。他の国と比べて決して多いとはいえない生産量ですが、熟練した生産者達がコーヒーの木を直接チェックし、収穫することができるため、その品質を一定に保つことができています。また、できるだけ農薬を使わない、あるいは無農薬にこだわり生産することで、人にも環境にも優しい農法だといわれています。近年、その姿勢とコーヒー豆の品質が世界的にも評価され、より良いコーヒー豆を生産することが農家の収入の安定化にもつながるという好循環を生み出しています。
【鄭 教授のコーヒーに対する情熱】
鄭 教授は台湾産のコーヒーを普及させるため、コーヒーに関する様々な資格を取得しています。例えば、Coffee Quality Institute (USA)が発行する品質と加工、Specialty Coffee Association (USA)が発行する焙煎と淹れ方の資格を有し、さらにはコーヒーだけでなくお茶や農地改良に関する資格も有しています。鄭 教授はこれらの資格を活かしてコーヒーに関する講座を開催するなどの普及活動も行っています。さらには、台湾の宿泊施設などで研修を行い、台湾産のコーヒー豆を積極的に使うように依頼するなどの活動も行っています。
【コーヒー生産の副産物の商品化】
鄭 教授は自身の農場でもいくつかの品種(ゲイシャ種、SL34種)のコーヒーの木を育てており、その際に出る廃棄物にも着目しています。剪定された葉や花、コーヒーを淹れる際に出る豆カスも利用することができないかと考えて、そこからいくつかの商品をつくっています。剪定された葉は、その成長ステージごとに適した種類のお茶に加工されています。例えば、柔らかく若い葉は「白茶」に、硬い葉は「紅茶」にしているといいます。また、花や果実はお酢に、コーヒーの豆カスはお線香や陶器などに加工しているといいます。
【曁南大学のコーヒー専門コース】
曁南大学は、大学敷地内にある農園でコーヒーの木を栽培するだけでなく、珈琲館という実習場も施設しました。また、コーヒーの専門コースを設置し、大学~博士後期課程の学生がコーヒーに関する様々なことを学んでいます。現在所属している学生たちは、トレーサビリティや環境への配慮、認証制度などをテーマに研究しています。いつかここで学ぶ学生たちが、鄭 教授のような情熱あふれるコーヒーの専門家になることで、台湾産コーヒーがさらに発展していくことが期待されています。
【最後に試飲会】
本会の終わりに、鄭 教授がプロデュースしたコーヒーやお酢を試飲しました。コーヒーを一口含んでみると、ゲイシャ種の特徴である柑橘系や桃の花の様な香りと、浅~中煎りによるさわやかな酸味が印象的でした。次に、コーヒーの花でつくったお酢は、原液のままいただくとハチミツのような甘さと香りで非常に飲みやすく、アイスクリームやヨーグルトなどと相性が良さそうでした。会の終了の時間が迫ってきてしまい試飲することができなかったコーヒーの葉で作った白茶は、1年茶、3年薬、7年宝といわれるように時間経過により味が深まっていくお茶です。どれも素敵なパッケージで購買意欲がそそられる商品でした。
【今後の展望】
最後に、鄭 教授は龍谷大学を香りで表現したオリジナル紅茶が作られていることなどを話題に挙げ、共同で白茶作りをしてみたいと話されていました。その際には、交換留学のような研究交流の展望についてお話しし、交流会は盛会のうちに終了いたしました。
【考察】
お茶とコーヒーには、その加工工程に発酵・熟成過程が含まれていることから、本研究センターの研究分野と関わりがあり、非常に興味深い話題でした。本会の中で島 教授は、コーヒーチェリーをコーヒー豆に加工する際に、人が好ましい風味を付与したり、味を良くしたりすることができるような菌を探索することで、さらに品質が良くなるのではと話しています。このように、それぞれの強みを持つ研究者が協力することで、今までにない新たなコーヒーや文化が生まれていく予感がしています。