フナズシの乳酸菌に関する小学生の研究に協力【発酵醸造食品機能性研究センター/農学部】
2025.01.15
フナズシ由来の乳酸菌図鑑で文部科学大臣賞を受賞した清水結香さん(同志社小学校5年生)が来校
滋賀県の伝統的な発酵食品であるフナズシは、琵琶湖固有種のニゴロブナをご飯と共に丸ごと漬け込んで乳酸発酵させたものです。乳酸菌には腸内環境を整える効果、整腸作用が期待できることから、滋賀県では古くからフナズシは薬効がある食品としても伝わってきました。
このフナズシの「いい」と呼ばれるご飯部分に含まれる約200種の乳酸菌に強い興味を持ち、「しがきん」と名付けて研究を進めてきた小学生がいます。
現在、同志社小学校5年生の清水結香さんは、小学3年生の頃に「なぜ乳酸菌はNK細胞を活性化させ、がん細胞への攻撃を助けるのか?」と不思議に思ったことから研究をスタート。自らフナズシを樽で漬けることにも挑戦し、研究機関等の専門家からアドバイスを受けながら「いい」に含まれる乳酸菌の培養、生菌数の測定などを行い、独自に「しがきん」図鑑を作成されました。
小学4年生の頃に応募した第64回 自然科学観察コンクール「シゼコン」では、小学生の部で文部科学大臣賞を受賞する快挙を遂げ(※1)、現在もがん細胞への攻撃を手助けする可能性がある「しがきん」に関する研究を継続して進めています。
2025年1月6日、清水結香さんが龍谷大学 発酵醸造食品機能性研究センター(※2)の田邊公一教授(本学農学部 食品栄養学科)のもとを訪れ、同センターに関わる研究設備を見学し、「しがきん」の分離培養実験を行いました。当日は、田邊教授の他に、吉山洋子氏(本学部農学部 生命科学科・ラボラトリー専門助手)、柿崎博美氏(発酵醸造食品機能性研究センター・博士研究員)が清水結香さんの研究に協力しました。
今回の訪問の経緯としては、清水結香さんが独自に収集してきた「しがきん」を自宅冷凍庫で長期保管することに難しさを感じたことから、田邊教授に相談されたことに端を発します。田邊教授が所属する発酵醸造食品機能性研究センターは、これまでも発酵醸造に有用な微生物の収集とデータベースの構築を行っており、長期保存に必要な設備を備えていることから、「しがきん」の菌株保存に協力することとなりました。
当日の実験では、①清水結香さんの「しがきん」7種の菌株保存のための分離培養、②独自に作られたフナズシの「いい」からの分離培養が行われました。これらのサンプルを実験室のクリーンベンチ(ホコリや浮遊微生物などの混入を防ぎ、無菌状態で作業を行う清浄作業台)で、シャーレの寒天培地に塗りつけて一定温度で培養すると、数日後には培地上に細菌の塊(コロニー)が見られます。
田邊教授は手本を見せながら、寒天培地への塗りつけ方やマイクロピペットの持ち方などのポイントを助言し、それを受けて清水さんは手早く作業を進めていきました。
今回の研究協力に関して、田邊教授のコメントを紹介します。
《微生物の研究には数グラム程度のサンプルで足りますので、鮒一匹を屋内で漬けられる「クラフト鮒寿司キット」をお渡ししました。好きなときに自宅で鮒寿司作製を始めていただき、鮒の変化も観察しながら、研究をもっと楽しんでもらえたらと思います。》
なお、今回の実験に関連して田邊教授のコメントが、NHK大津放送局「おうみ発630」(2025年1月8日放送)において紹介されました。(※3)
【補註】
(※1)参照:自然科学観察コンクール「シゼコン」 > 入賞作品 > 世界に広まれ、「しがきん」の発こう力! ~日本初のにゅうさんきん図かん~
https://www.shizecon.net/award/detail.html?id=695
(※2)龍谷大学 発酵醸造食品機能性研究センター
滋賀県の発酵醸造産業を支援することを目指して2021年度に開設。発酵醸造に有用な微生物の収集とデータベースの構築、およびそれらを活用した応用研究の展開を目的として研究活動を展開している。2021-2023年度は発酵醸造微生物リソース研究センターの名称で活動し、2024年度より現在の名称に改称。「微生物の有用機能を介した発酵醸造学とスポーツ栄養学の融合とマネジメントによる滋賀県域における応用展開」をテーマに、研究体制を拡充して、より学際的に研究を推進している。
https://hakko.ryukoku.ac.jp/
(※3)参照:NHK大津放送局 > 「おうみ発630」(2025年1月8日放送)
https://www.nhk.jp/p/omi630/ts/8RG6LZ736N/episode/te/G94Q2GMVXW/