滋賀県の発酵醸造産業への貢献をめざして【発酵醸造食品機能性研究センター】
2025.03.07
【ビール酵母作り(THE LOCAL)】
2025年1月23日(木):今年も、大津市産の原材料にこだわった究極の地産地消クラフトビール「THE LOCAL」の仕込みが始まりました。発酵醸造食品機能性研究センターのセンター長である島 純 教授(本学農学部生命学科)、センター兼任研究員の田邊 公一 教授(農学部食品栄養学科)、センター博士研究員の柿崎 博美、島教授の研究室の研究員である山下 博士と同研究室の大学院生および学部生が参加し、本学内にて「THE LOCAL」に使用するビール酵母の調製を行いました。まず、冷凍保存していた酵母を前培養し、その後、本培養(20L)を行いました。続いて、遠心分離により酵母を回収し、洗浄工程へと進みました。洗浄工程では、酵母を冷却した滅菌水で数回洗浄し、最終的に適量の滅菌水に懸濁しました。調製した酵母は、近江麦酒株式会社の代表である山下 友大さんにお渡しし、その後、同社の醸造施設(大津市本堅田)を見学しました。ちょうどその時、「THE LOCAL」に使用する麦芽の煮沸が行われていました。今年の麦芽は糖分が昨年よりも少ないため、アルコール度数の低いビールになるのではないかと予想されます。アルコール度数を抑えることで、日々のリラックスタイムや運動後など、さまざまなシーンに適したビールになることが期待されます。完成が今から楽しみです。


【醤油仕込み(みなくちファーム)】
2025年1月24日(金):発酵醸造食品機能性研究センターの島 純 教授(センター長、本学農学部生命学科)、田邊 公一 教授(センター兼任研究員、農学部食品栄養学科)、柿崎 博美(センター博士研究員)、および島教授の研究室に所属する大学院生 池本 匠の4名で、滋賀県高島市マキノ町にある「みなくちファーム」を訪問しました。本訪問の目的は、みなくちファームの代表である水口 淳さんから「高島において発酵食品を自作する文化を継承していきたい」という依頼を受け、自家製醤油の製造プロセスについて技術的な助言を行うとともに、発酵・醸造の観点から品質向上に向けた提案を行うことです。


水口さんは、「商品を作ること自体を目的とするのではなく、高島の食材を活用し、地域の人々が誰でも取り組める方法で醤油造りを行いたい。まずは、菌の違いや醤油の発酵に関わるメカニズムを理解することが重要ではないか」と考え、当センターに相談されたそうです。水口さんが疑問に感じていた点として、①麹菌と酵母のはたらきの違い、②納豆菌の影響による醤油の品質変化、③適切な塩分濃度の設定、④小麦を粉砕するべきか否か、⑤一般的な麹菌と種麹菌の違い、⑥温度管理などが挙げられました。島 教授らは、これらの疑問に対して説明を行い、実際に醤油造りを進めることとなりました。まず、水口さんと、みなくちファームスタッフである瀬口 結以さんが大豆と小麦を混ぜ合わせた後、種麹菌を添加する工程を開始しました。使用した材料の分量は、大豆10 kg、小麦10 kg、種麹菌30 gです。屋外の釜で蒸し煮にした大豆の粗熱をとり、煎った小麦を砕いて混ぜ合わせた後、種麹菌をふりかけ、さらに十分に混ぜ合わせました。その後、混合物を自動発酵機に入れ、この日の作業を終了しました。今後は、水口さんが発酵の進行状況を確認し、麹菌が十分に増殖した段階で塩水に漬ける工程へと進む予定です。その後も毎日攪拌を続けながら、じっくりと醤油を仕込んでいく予定です。



