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滋賀国スポ2025総合閉会式会場にて、独自開発の「鮒寿司クッキーサンド」を試食提供【発酵醸造食品機能性研究センター/農学部】

2025.10.17

低・未利用魚を活かし、滋賀の食文化を未来へ。産官学が協働した挑戦


発酵醸造食品機能性研究センターと農学部食品栄養学科の学生、そして鮒寿司メーカー・奥村佃煮が連携し開発した「鮒寿司クッキーサンド」が、2025年10月8日(水)に開催された「第79回国民スポーツ大会・第24回全国障害者スポーツ大会(わたSHIGA輝く国スポ・障スポ)」の滋賀国スポ2025総合閉会式の会場内「おもてなSHIGAエリア」にて、来場者へ試食提供されました(※)

1981年の「びわこ国体」以来、44年ぶりに滋賀県で開催された滋賀国スポ2025では、滋賀県が男女総合優勝・女子総合優勝を果たしました。滋賀県彦根市の平和堂HATOスタジアムで行われた国スポの閉会式には、秋篠宮家の次女佳子さまも臨席され、出場選手や大会関係者、一般観覧者ら約1万人が来場。11日間の熱戦に幕を下ろしました。

会場:彦根総合スポーツ公園/国スポ・総合閉会式
「琵琶湖と共生する滋賀の農林推進協議会」(事務局:滋賀県 農政水産部 農政課)ブースにて出店

今回の大会会場内で試食・提供した「鮒寿司クッキーサンド」開発プロジェクトは、琵琶湖の固有種であるニゴロブナの雄など、これまで利用が限られてきた低・未利用魚を活用し、滋賀の伝統的発酵食・鮒寿司を現代の食卓に親しみやすい形で届けることを目的とした取り組みです。本学農学部食品栄養学科の学生が中心となってアイデアを出し、試作と改良を重ねたクッキーサンドは、伝統と新しさを融合させたユニークな一品として来場者の注目を集めました。

鮒寿司(ニゴロブナの雌)の参考イメージ
「鮒寿司クッキーサンド」の参考イメージ

  

【ブース来場者の反応とアンケートから見えてきたこと】
鮒寿司は、塩漬けにした琵琶湖固有種のニゴロブナを米飯と共に漬け込んで乳酸発酵させたもので、特に卵を抱えた雌(子持ち鮒寿司)は珍味として有名です。この鮒寿司の「飯(いい)」と呼ばれるご飯部分にも複数の乳酸菌が含まれていることから、滋賀県では古くから腸内環境を整え、免疫力を高める効果があると伝わり、大切に食されてきました。
そこで当日は、「雄のフナの身入り(A)」と「飯部分のみ(B)」の2種類の「鮒寿司クッキーサンド」を用意。A・Bを食べ比べていただくために100セットを配布し、ほぼすべてのブース来場者からアンケートを回収しました。Bの方が「食べやすい」「香りがやさしい」と好評で、半数以上の方がBの方が好みだと回答。一方で、フナの旨味がより強く感じられるAを好む来場者もおり、幅広い嗜好の存在が浮き彫りになりました。

 

今回のブース出店において、来場者への説明や試食提供・アンケートに携わったメンバーのコメントを紹介します。

田邊 公一教授コメント(農学部・発酵醸造食品機能性研究センター兼任研究員)
若い方や子どもからは“手放しで美味しい”という反応は少なかったものの、年配の方には高評価でした。クッキーという洋菓子の中で魚の風味をどう位置づけるかが今後の課題です。魚の香りを消しすぎると個性が失われ、残しすぎると食べにくくなります。このバランスを探ることが、幅広い年代にアピールできるレシピ改良の鍵になると考えています。

宿谷 紗良さん(本学農学部食品栄養学科4回生)
A(フナの身入り)/B(フナズシの飯部分のみ)で分けて試作・提供した「鮒寿司クッキーサンド」は、A・Bともに鮒寿司を入れる分量、飯を入れる分量を何度も試作して決めました。また、“多くの人に食べてもらえるお菓子”を目指して、米粉を使ったグルテンフリー仕様に。さらに、和の鮒寿司と洋のクッキーサンドを調和させるため、柚子パウダーと醤油を隠し味に加えているのもポイントです。
当日は多くの方に試食いただき、「思っていたより匂いがしない」と驚かれる声もありました。鮒寿司を食べることへの敷居が少し低く感じていただけたようで、とても嬉しかったです。

山口 りえさん(本学農学部食品栄養学科4回生)
「鮒寿司クッキーサンド」を作る中で、クッキーを食べた後に残る鮒寿司特有の臭みを和らげる工夫を見つける瞬間を身近に体験しました。この経験を通して、ものづくりの過程では試行錯誤を重ねながら少しずつ工夫を見つけていくことが大切だと実感しました。
また、実際に多くの方に試食していただき、「鮒寿司の独特の風味がやわらぎ、食べやすい」という意見を直接うかがうことで、改良の可能性や工夫の余地を知ることができました。私自身はサポートの立場でしたが、開発の裏側や実際の反応を間近で学ぶことができ、とても貴重な経験になりました。

水原 由衣さん(本学農学部食品栄養学科4回生)
開催地の関係上、滋賀県およびその周辺にお住まいの方が多く、鮒寿司を食べたことのある方が多かったため、特に抵抗感もなく召し上がっていただけました。
しかし、今後の商品開発を見据えた際には、鮒寿司を食べたことがない方や、鮒寿司が苦手な方の意見が非常に重要になると感じています。そうした方々にも受け入れられる商品にするためには、鮒寿司特有のクセをある程度抑える必要があると考えます。
一方で、味の継承という観点からは、クセを完全に取り除くのではなく、伝統の風味を残しつつ、受け入れられる商品を開発することが求められます。今回の取り組みを通じて、その難しさと重要性を実感できたことは、自分にとって非常に貴重な経験となりました。

会場内のパネル画像(宿谷 紗良さん作成)
宿谷さんと山口さんの準備風景(本学農学部ヒト代謝実験室)

国スポにつづき、10月25日〜27日には、滋賀障スポ2025(第24回全国障害者スポーツ大会)が行われます。次回は10月27日(月)9:00〜、障スポ・閉会式会場「おもてなSHIGAエリア」(彦根総合スポーツ公園内)にブース出店します。

本開発プロジェクトは、滋賀県の世界農業遺産「琵琶湖システム」を未来へとつなぐ取り組みの一環として進められています。今後はアンケート結果を分析し、改良を重ねながら製品化を目指す予定です。
大学・企業・行政・地域が連携し、滋賀ならではの発酵文化を次世代へ伝える挑戦が続きます。

「琵琶湖と共生する滋賀の農林推進協議会」ブース運営メンバー
田邊 公一教授と本学農学部食品栄養学科のゼミ生

→(※)ブース出店日時などの詳細はプレスリリース(2025年10月2日配信)を参照してください。